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労働力が過剰から不足に向かう中国

发布时间:9/12/2007 2:42:32 PM 来源:Dg3g.Com
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     中国経済新論「実是求事」-関志雄

新しい発展段階における機会と挑戦

  農村部での豊富な余剰労働力の工業部門への移転は、これまで中国の高度成長を支えてきた。しかし、近年、沿海地域における出稼ぎ労働者の供給がタイトになってきたことに象徴されるように、中国は、急速に労働力過剰から不足の段階に向かっている。これを反映して、1998年まで実質賃金の伸びは一貫してGDP成長率を大幅に下回っていたが、その後、両者の関係が逆転するようになった(図1)。完全雇用の達成は、中国の更なる成長を制約する要因になりかねないと懸念されるが、その一方で、所得格差の是正や産業高度化に寄与するだろう。

図1:GDP成長率を上回るようになった実質賃金の伸び率

(出所:中国統計摘要2007)

  中国の農村部には、1.5億人ほどの余剰労働力が存在すると言われてきた。政府がまとめた「国家人口発展戦略研究報告」(2007年1月に発表)においても、同じ数字が援用されている。このような「労働力過剰説」に対して、中国社会科学院人口・労働研究所の蔡〓所長(〓は日へんに方)は、一連の研究で異論を唱え、過剰から不足への転換点(「ルイス転換点」という、付録参照)は2009年にも到来すると論証し、話題を呼んでいる(「中国経済が直面している転換とその発展と改革への挑戦」、『中国社会科学』、2007年第3期、「中国における雇用の拡大と構造変化」、中国社会科学院における報告、2007年5月10日)。彼によると、経済の高成長と1980年代の初めから徹底されてきた一人っ子政策の影響で労働年齢人口の伸び率が低下していることを背景に、2004年以降、労働需要がすでに労働力人口を上回るペースで伸びており、2009年頃には、農村部の余剰労働力が完全に枯渇するという。

  無限と言われた労働力の供給は、次のルートを通じて、中国の経済成長を支えてきた。まず、供給側では、農業部門における余剰労働力が工業部門に吸収されることは、直接GDPの拡大に貢献している。また、賃金が低水準に維持されることは、所得分配の面において、資本収入を得られる高所得層に有利に働き、ひいては高貯蓄と高投資につながっている。さらに、需要の面では、低賃金が、低コストに基づく輸出主導型成長を可能にしてきた。しかし、完全雇用が達成されれば、生産性の上昇に合わせて賃金が上昇するようになり、雇用も労働人口の伸びに制約されることになる上、貯蓄率と労働集約型製品における輸出の国際競争力が落ちてしまう。その結果、成長率も低下せざるを得ない。

  但し、完全雇用の達成後の生産性の上昇に伴う賃金上昇は、中国経済にとって決して悪いことばかりではない。まず、賃金上昇に伴って国民所得における賃金収入の割合が高まり、所得分配における格差が縮小することになる。賃金に限らず、労働市場における需給関係の変化は、すでに労働時間の短縮や戸籍制度の緩和など、労働者の権利の改善につながりつつある。失業率の低下とともに、これらは、社会の安定にも貢献するだろう。

  また、生産性の上昇に伴う賃金の上昇は、物価の上昇(固定為替レートの場合)、または名目為替レートの上昇(変動為替レートの場合)を通じて実質為替レートの上昇をもたらす(バラッサ=サミュエルソンの仮説)。かつて日本が経験した「円高」のように、「元高」も、交易条件(輸出の輸入に対する相対価格)の改善を通じて中国の国民の購買力を向上させ、ひいては内需の拡大と対外不均衡の是正に寄与するだろう。

  さらに、1960年代の日本のように、このような相対価格の変化は、労働集約型産業の国際競争力の低下をもたらす一方で、これを乗り越えるための企業の経営努力を通じて、産業構造の高度化と生産性の上昇を促す要因にもなりうる。これにより、予想される成長率の低下に歯止めがかかることになろう。実際、日本では、1960年頃にすでに完全雇用を達成したと見られるにもかかわらず、10%前後の高成長は1970年まで続いた。

  最後に、これまで中国政府は、雇用へのマイナス影響を懸念し、人民元の切り上げには慎重であったが、完全雇用が達成されれば、このような配慮をする必要性がなくなる上、賃金上昇に伴うインフレ圧力を抑えるためにも、人民元の切り上げにはより積極的姿勢に転換するだろう。

付録:「ルイス転換点」とは

  中国のような農業という伝統部門と工業といった現代部門からなる二元経済における経済発展を分析する際、経済学者W.A.ルイス(1915-1990)が発案したモデル(彼の業績に因んで「ルイスモデル」と呼ばれている)が有効である。これによると、多くの発展途上国においては、農村部における大量の余剰労働力が存在するため、工業部門にとって、労働力の供給が実質上、無限大である。賃金が労働者の生存のために必要である最低水準に据え置かれることになるが、工業部門と農業部門における雇用は、それぞれの限界生産性と賃金水準が一致するレベルで決められる(図2)。

図2:ルイスモデルにおける賃金と雇用の関係

(出所:筆者作成)


  外資導入などによる工業部門での生産性の上昇は賃金上昇を招くことなく、農業部門の余剰労働力を吸収する形で(工業部門、ひいては経済全体の)雇用の拡大をもたらす(図3a)。これに対して、完全雇用が達成される「ルイス転換点」を超えると、工業部門において農業部門での雇用を減らす形で労働力を確保するために、賃金水準を上げなければならないが、全体の雇用は増えない(図3b)。

図3:工業部門における生産性上昇の影響

(出所:筆者作成)。(出典:独立行政法人経済産業研究所中国経済新論」)


【執筆者】
関志雄(かん しゆう)

経済産業研究所 コンサルティングフェロー、野村資本市場研究所 シニアフェロー

1957年香港生まれ。1979年香港中文大学経済学科卒、1986年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。1996年東京大学経済学博士。香港上海銀行本社経済調査部エコノミスト、野村総合研究所経済調査部アジア調査室室長、経済産業研究所上席研究員等を経て、2004年より現職。

●著書(一部)
  • 中国を動かす経済学者たち(東洋経済新報社、2007年)
  • 中国経済のジレンマ(筑摩書房、2005年)
  • 中国経済革命最終章(日本経済新聞社、2005年)
  • 共存共栄の日中経済(東洋経済新報社、2005年)
  • 日本人のための中国経済再入門(東洋経済新報社、2002年)
  • 円圏の経済学(日本経済新聞社、1995年 アジア・太平洋賞特別賞受賞)

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